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食品微生物の基礎知識

ウエルシュ菌〔Clostridium perfringens/C. welchii

ウエルシュ菌は,芽胞を形成する嫌気性のグラム陽性大桿菌でClostridium属に属する.1882年,病理学者ウエルヒ(William H.Welch)が,ガス壊疽患者から初めて分離したことからウエルシュ菌と呼ばれる.本菌は,牛乳培地中で嵐状発酵(stormy fermentation)を生じ,ゼラチンを液化し,乳糖分解性で,卵黄寒天上でコロニー周囲に不透明乳白色の沈降帯をつくる.この反応はナグラー反応と呼ばれ,ウエルシュ菌の産生するα毒素(レシチナーゼ)が卵黄中のレシチンを分解して生じる現象である.ウエルシュ菌の血清型には,Hobbs型,TW型,米国CDCの型別システムなどがあり,生菌を用いたスライド凝集法で行われる.日本では,ウエルシュ菌診断用血清Hobbs型(1~17型)が市販されている.ウエルシュ菌は少なくとも14種類の毒素を産生し,主要な4種類の毒素(α,β,ε,ι)の産生性から,A,B,C,D,Eの5つの毒素型(菌型)に分類されている.ヒト,動物,自然界から分離されるウエルシュ菌のほとんどはA型菌(α毒素を産生し,β,ε,ιは非産生)である.ヒトに対する病原性の主なものは,下痢原性とガス壊疽起病性である.下痢原性因子であるエンテロトキシンを産生するウエルシュ菌は,食中毒を惹起する.食中毒由来ウエルシュ菌は,一般に熱抵抗性が高い「耐熱性芽胞形成ウエルシュ菌」である.ウエルシュ菌はヒトをはじめ,あらゆる動物の正常ミクロフローラとして大腸に常在し,また,自然環境にも広く分布しているため,食肉をはじめ魚介類や野菜など多くの食品が本菌に汚染されている.しかし,これら環境中に存在するウエルシュ菌の多くはエンテロトキシンを産生せず,ヒトの腸管内では病原性を示さない.

(門間千枝先生,中央法規出版「食品微生物学辞典」より)

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