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食品微生物の基礎知識

ノロウイルス〔Norovirus

カリシウイルス科(Caliciviridae)の4つの属,NorovirusSapovirusVesivirusLagovirusの一つとして分類されている.この中で,ノロウイルス,サポウイルスがヒトに感染する.ノロウイルスはヒトの空腸などの小腸で増殖する.以前は小型球形ウイルス(small round structured virus;SRSV)とも呼ばれていた.エンベロープを持たず,消化酵素などが多量に含まれている腸管内でも生存する.したがって環境に強いウイルスである(感染力が失活しない).ウイルスの大きさは約38nm,プラス鎖の一本鎖RNAを有しその大きさは約7.6kbである.3つのORF(読み取り枠)を持ち,ORF2,ORF3の一部はそれぞれウイルスカプシド蛋白質VP1,VP2をコードし,VP1はsubviral particleから構成される.非構造蛋白質をコードするORF1はウイルス粒子形成に必要な様々な酵素の作成に関わる.ノロウイルスにはGenogroup(G)が存在し,それらはGⅠ,GⅡ,GⅢ,GⅣ,GⅤである.ヒトに感染性を有するものはGⅠ,GⅡで,さらにこれらにはGenotype(遺伝子型)がそれぞれ15(以上)および18(以上)存在している(GⅠ/1-15,GⅡ/1-18).ノロウイルスは細胞培養や感受性動物を用いた増殖系は未だに確立されていない.ヒト以外でマウスノロウイルスは細胞培養による分離ができるようになった.ヒト血液型物質の研究から,分泌型の血液型物質を持つヒトはノロウイルスの感染率が高く,非分泌型のヒトは感染しないか感染率が極めて低いことがわかった.遺伝子型による吸着性の研究では,画一性は見いだされていないが,血液型物質はノロウイルスレセプター解析に欠かせない研究課題となっている.また,感染すると成人では3週間以上,小児では4週間以上にわたりウイルスを便中に排泄し続ける(ヒトが感染し,下痢症を呈すると糞便1g中に104~1010コピーのウイルス遺伝子が検出される).米国の研究では10~100個のウイルス粒子で感染が成立すると言われ,感染力は極めて強い.熱処理では85℃,1分間で感染性は失活するとされている(厚生労働省指針).感染経路には,環境中のノロウイルスを濃縮した牡蠣などの二枚貝の生食,ヒト(主に調理従事者)を介したノロウイルスの食品汚染,吐物から塵埃などに付着したウイルスの吸引などがある.

(田中智之先生,中央法規出版「食品微生物学辞典」より)

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