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食品微生物の基礎知識

リステリア・モノサイトゲネス〔Listeria monocytogenes

リステリア属は8菌種に分類されているが,リステリア食中毒を起こすのは,L. monocytogenes(リステリア)の1菌種である.リステリアは乳製品や食肉加工品などを介してヒトに感染し,リステリア食中毒の原因となるほか,ウシやヒツジなどの家畜に感染して流産,敗血症,脳炎などの原因となる人獣(畜)共通感染症の病原体である.リステリアは,グラム陽性の芽胞を形成しない通性嫌気性桿菌で,鞭毛を持ち運動性がある.本菌は血液寒天培地上では,リステリオリジン(listeriolysin O)により,弱いβ溶血を示す.この溶血はCAMP試験により明確な溶血を示すのが特徴で,この性状は本菌の同定に重要である.リステリアは低温増殖性があり,氷温でも食品が凍結していなければゆっくりと増殖する.10%の食塩や,食肉製品に用いられる濃度の亜硝酸塩には抵抗性を示し,増殖可能である.本菌は莢膜および芽胞を形成しないので,食品の微生物制御に用いられる通常の熱処理により死滅する.ヒトのリステリア症患者からは主に3つの血清型(1/2a,1/2b,4b)の分離頻度が高い.わが国ではヒトのリステリア症の60%以上が血清型4bを原因としている.リステリアは食品とともに経口的に摂取された後,表層蛋白internalin Aによりヒト小腸の上皮細胞の側底部に存在するE-cadherinをレセプターとして結合し,上皮細胞内に侵入する.リステリオリジンなどの一連の病原因子の作用で隣接細胞への拡散を繰り返し,血管内に侵入した後は脾臓,肝臓を経て全身に拡散するとされる.マクロファージなどの殺菌細胞内でも生残し,体内へ拡散する細胞内寄生菌である.本菌の感染防御には細胞性免疫が必要と考えられている.リステリア症はその症状のみでは類似の細菌性感染症との鑑別が困難であり,確定診断には,本菌の分離同定を必要とする.

(五十君静信先生,中央法規出版「食品微生物学辞典」より)

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